離婚後、住宅ローンの残る家に妻が住むには?では、離婚した元妻がマイホームに住み続けるための3つの方法を簡単に説明しました。今回はそのうちの一つ、「住宅ローンの残る家を妻名義に変更して妻が住む方法」について詳しく解説していきます。
【離婚後】家も住宅ローンも妻名義にして妻が住む方法
まず、話を分かりやすくするために、よくあるパターンで状況を設定しておきましょう。
【前提】
・夫婦と子ども1人で、住宅ローンを組んで購入した家に住んでいる。
・家の名義(所有者)は夫。
・住宅ローンの名義(債務者)は夫。
・住宅ローンの連帯保証人は妻。
離婚後、住宅ローンの残る家を夫名義にしたまま妻が住む方法では、家も住宅ローンも夫名義のままにしておきましたが、今回ご説明する方法は、家も住宅ローンも元妻の名義に変更する方法です。
家も住宅ローンも元妻の名義にできれば、完全に元夫との関係をなくすことができます。自分の家に住みながら、自分で住宅ローンを返済していくわけなので、誰に負い目を感じることもなく新生活を始められます。
家と住宅ローンの名義を元妻にするためには、「現在の住宅ローンの債務者を元妻に変える」「元妻が別の銀行で住宅ローンの借り換えをする」の2つの方法があります。
方法01:現在の住宅ローンの債務者を元妻に変える
家の名義人(所有者)が一人であれば、基本的に名義変更するのに誰の許可も要りませんが、住宅ローンが残っていると話は別です。住宅ローンが残っているのに勝手に家の名義を変更すると、通常は銀行との契約違反になります。
住宅ローンが残った家の名義を元夫から元妻に変更したいなら、銀行の承諾をもらったうえで、まずは住宅ローンの名義人(債務者)を元夫から元妻に変更する必要があります。簡単な流れを示すと、以下のようになります。
(1) 住宅ローンの名義人(債務者)を元夫から元妻へ変更したいと銀行に申し入れる。
(2) 銀行は、元妻の返済能力を審査する。
(3) 銀行が元妻の収入で住宅ローンを完済できると判断すれば、債務者の変更が認められる。
(4) 住宅ローンの名義人(債務者)を元夫から元妻へ変更する。
(5) 財産分与という形で、家の名義人(所有者)を元夫から元妻へ変更する。
(6) 以後、住宅ローンは元妻が返済していく。
問題がなければ、住宅ローンの名義も家の名義も元妻に変更できますが、ネックになるのが(2)(3)のところです。銀行が「元妻の収入では住宅ローンを完済できない」と判断すれば、債務者の変更は認められませんし、そうなると家の名義も変更できません。
銀行から承諾を得るには、元妻に元夫と同程度、もしくはそれを上回る収入があり、住宅ローンを完済するまで収入を継続できるという信頼が必要になります。しかしながら、現実的に離婚する女性の多くは元夫に匹敵する返済能力を持っていないため、住宅ローンの名義変更ができるケースは極めて稀だと言えるでしょう。
方法02:元妻が別の銀行で住宅ローンの借り換えをする
借り換えとは、現在の住宅ローンを完済して、新たに別の住宅ローンを組むことです。たとえば、現在返済中の住宅ローンはA銀行のもので、残債が2,000万円だとします。この住宅ローンを、B銀行の住宅ローンに借り換える流れをご説明しましょう。
(1) 元妻がB銀行で新規に2,000万円の住宅ローンを申し込む。
(2) B銀行は、元妻の返済能力を審査する。
(3) 審査を通れば、B銀行は元妻に2,000万円を貸し付ける。
(4) 元妻はB銀行から借りた2,000万円で、元夫名義のA銀行の住宅ローンを繰り上げ返済する。
(5) 家の名義人(所有者)を元夫から元妻に変更する。
(6) 以後、元妻はB銀行に住宅ローンを返済していく。
借り換えができれば、家も住宅ローンも元妻の名義にできます。もちろん元妻は毎月住宅ローンを返済していく必要がありますが、元夫との関係を断って新生活をスタートできるのは大きなメリットだと言えます。
離婚にともなう住宅ローン借り換えの注意点
借り換えは元妻が別の銀行で借金をするわけなので、方法01と同様に元妻の返済能力が審査されます。審査をパスすれば借り換えができますが、そのためには元妻に相当な収入があり、住宅ローンを完済するまでその収入を維持できるといった信頼が必要になります。住宅ローンの借入額や元妻の年収などにもよりますが、収入が不安定な非正規雇用などの場合は借り換えは難しいと言えるでしょう。
とはいえ、借り換えは複数の銀行に相談することができます。たとえば、B銀行で審査に落ちてもC銀行で通ったり、C銀行で審査に落ちてもD銀行で通ったりするケースもあるため、方法01よりは実現しやすい方法だと言えます。
まとめ:【離婚後】住宅ローンの残る家を妻名義に変更して妻が住む方法
今回は、家も住宅ローンも妻名義に変更して妻が住むための方法を2つ解説しました。いずれの方法も、できるだけ離婚する前に準備を進めるのがポイントです。
「この方法は難しそう」「うちの場合は合わない」という方は、以下の方法を検討してみてはいかがでしょうか。
>> 離婚後、住宅ローンの残る家を夫名義にしたまま妻が住む方法
>> 離婚後、住宅ローンの残る家を売却してから妻が住む方法
この記事の監修者情報
- 監修者
- 斎藤 善徳(さいとう よしのり)
- 不動産業界歴
- 約20年
- 担当した任意売却数
- 200件以上
- 保持資格
- 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
- 著書
- 運営会社:
- 千里コンサルティング株式会社
- 本社オフィス:
- 〒534-0021 大阪市都島区都島本通4-22-4 2階
- 電話番号:
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