仮差押と差押え、この2つの違いを理解している方は、決して多くはないでしょう。
この記事では、この2つの制度の概要と違いをわかりやすく解説しています。
また、手続きが進んで競売になった場合に、これを回避する方法のひとつである任意売却についても詳しく解説しているので、最後までお読みください。
仮差押えと差押えの違い
仮差押えと差押えの違いを知っている方は少ないでしょう。
字面だけを見ると似ていますが、両者の間には様々な違いがあります。
そこでまず、仮差押えとは何か、差押えとは何かを詳しく解説し、最後にまとめる形で仮差押えと差押えの違いを解説していきます。
仮差押えとは
仮差押えとは、金銭債権の強制執行ができなくなる恐れがあるときや強制執行をするのが難しくなる恐れがある時に、債務者の財産の処分を制限することです。
強制執行ができなくなる恐れがある時とは、裁判により判決が出て差押えるときに、差押えるべき資産がすでに処分されていて、強制執行できない場合を言います。
民事裁判は判決が出るまでに平均で1年~1年半かかると言われています。
その間に、差押えるべき資産を処分されてしまったら、たとえ勝訴判決を得たとしても意味がありません。
仮差押えは、裁判所に申立てをしてから、通常3~5日で仮差押えの決定がでるので、仮差押えで資産の散逸を防ぎます。
このように仮差押えとは、将来出る可能性のある判決が空振りにならないように債務者の資産を確保する制度なのです。
仮差押えは、比較的容易におこなえるにもかかわらず、差押えと同様に、債務者の資産の処分を制限されてしまいます。
そこで、債務者の損害を補うために裁判所に仮差押え命令をもらうには、担保金を納めることが必要です。
また、債務者に不当な不利益がないように、債務者の不利益にならない資産から差押えすることになっています。
差押えとは
差押えとは、債務者が債務の支払いをしなかった場合、債権者が債権を回収するための手段で、競売のために債務者の資産の処分を制限する裁判所の命令です。
差押えを行うには債務名義が必要で、仮差押えの場合不要であるところが大きな違いです。
債務名義とは具体的には訴訟による判決などのことで、上述したように平均1年~1年半かかります。
差押えの原因は、抵当権の実行、裁判所の判決、税金の滞納の3つがありますが、住宅ローンの滞納の場合、抵当権の実行によるものが殆どです。
抵当権の実行による差押えの場合、債務名義は不要です。
債務者が住宅ローンを滞納した場合、債権者は競売の申し立てを行いその売却代金により債権を回収します。
また、仮差押えと違い担保金は不要です。
仮差押えと差押えの違いを以下の表にまとめます。
仮差押え | 差押え | |
強制執行 | × | 〇 |
債務名義 | 不要 | 必要(担保付きの場合不要) |
立証方法 | 書面が原則 | 制限なし |
担保金 | 必要 | 不要 |
仮差押えと差押えの共通点
仮差押えと差押えの主な共通点は2つあります。
1つめは、両制度とも裁判所の手続きを経た非常に強力な債権回収の手段であることです。
債権回収の手段は他にも、債務者に内容証明郵便を送付する、催促の電話をかける、債務者を訪問し直接口頭で催促するなどの手段があります。
しかし、仮差押えと差押えは裁判所を経た手続きであるため、心理的にも相手に対して債務の履行を促す効果があります。
2つめは、消滅時効の完成が猶予されるというものです。
かつては仮差押えと差押えは時効の中断といって、時効の進行がリセットされる効果しかありませんでしたが、民法改正により新法では時効の完成が猶予される効果があります。
内容証明郵便にも時効完成猶予の効果はありますが、その期間は6ヶ月で、その期間に訴訟の準備をして裁判所に申立てなどを行う必要があります。
仮差押えと差押えの後はどうなるのか?
仮差押えや差押えが実行されると、その旨が登記に記載され資産の処分を制限されます。
その後、債務者が何の手も打たなければ、執行官による現況調査、競売が実行され債務者は家を明け渡すことになります。
競売で得られた利益は債権者に配当され、債権者はこれで債権を回収することが可能です。
競売になると、当該物件の情報が公開され、入札予定の不動産業者や投資家が調査にやってきます。
場合によっては、近隣住民に聞き込みをすることもあるため、家が競売にかかっていることが知られる可能性があるのです。
近隣住民に好奇の目で見られることは、大きな精神的苦痛でしょう。
現在の家に住み続けられる2つの方法
競売が実行され落札されると、落札者に家を明け渡して出ていかなければなりません。
しかし、現在住んでいる家に住み続けられる方法が2つあります。
1つは、残債務を一括で弁済する方法、もう1つは、住宅ローン特則を利用する方法です。
以下で詳しく解説します。
残債務を一括で弁済する
残債務を一括で弁済すると、債権者は競売を取り下げることになります。
一括弁済できる資産を持つ親類や知人にお金を借りられるなら、この方法を使うのも手です。
ただし、金融機関への債務は消えますが、お金を貸してくれた人への債務は当然残ります。
しかし、親類や知人なら返済の期間や返済額など無理のない範囲で設定してくれる可能性があります。
住宅ローン特則を利用する
住宅ローン特則とは、正確には住宅資金特別条項といい、個人再生の一環として住宅ローンを個人再生から切り離し、現在の家に住み続けることができる制度です。
ただし、この制度を利用するには以下の条件を満たすことが必要です。
・借金が住宅ローンであること
住宅購入以外の目的で、ローンの一部を利用している場合は、住宅ローン特則は使えません。
・債務者自身の持ち家であること
債務者と住宅の所有者が異なる場合は、住宅ローン特則は使えません。
例えば、債務者が夫で、住宅の所有者が妻である場合などが当たります。
・債務者自身が居住している家であること
投資目的の住宅や事業所として使用しているなど、居住の実態がない場合は、住宅ローン特則は使えません。
・住宅ローン以外の抵当権がないこと
・保証会社が代位弁済した6カ月以内であること
条件が厳しいですが、利用できれば家に住み続けることができる上に、住宅ローン以外の債務を大幅に減額できるなどメリットが大きいので、検討する価値は十分あります。
競売を回避するなら任意売却
最後に、競売回避の方法として任意売却を解説します。
任意売却とは、住宅ローンの返済を滞納した場合に、債権者である金融機関の許可を得て一定の条件の下で担保付不動産を売却することです。
任意売却は期間入札開始日まで使用できるので、住宅ローン特則の期日を過ぎてしまっても使える可能性があるところがメリットの1つです。
また、任意売却は競売と比較して以下のメリットがあります。
競売 | 任意売却 | |
売却相手 | 選べない | 債務者が任意に選べる |
売却価格 | 市場価格の5~7割程度 | 市場価格に近い価格 |
情報公開 | される | されない |
退去時期 | 裁判所が決定 | 買い手との交渉次第 |
競売に比べて、メリットの多い任意売却ですが、成功させるためには3つのポイントがあります。
1つ目のポイントは、任意売却を専門に扱う不動産業者や弁護士、司法書士などの第三者に依頼することです。
任意売却の手続きは複雑で、一般の方が行うには難しいからです。
2つ目のポイントは、出来るだけ早い時期に上記の専門家に相談をすることです。
相談時期が早いほど、売り手を見つける時間を長く確保出来て、債権者にとって良い条件で売却出来る可能性があるからです。
3つ目のポイントは、債権者との交渉を上手くやることです。
債権者は投下した資本をなるべく多く回収したいため、売却価格を高めに設定したがる傾向にあります。
任意売却の専門家なら経験から適切な売却価格を金融機関と交渉してもらえるからです。
まとめ
仮差押えと差押えの違いと、差押え後にどうなるのかを解説してきました。
また、競売回避の方法として、一括返済・住宅ローン特則・任意売却についても詳しく解説しました。
任意売却は、競売回避の方法として一般の方々にも浸透しつつあります。
しかし、任意売却を行うには、手続きの煩雑さや金融機関との交渉といった専門的な知識やスキームが必要です。
任意売却を検討されているなら、全国任意売却支援相談室(千里コンサルティングオフィス)にご相談ください。
任意売却専門のプロフェッショナルが、最後まで親身になってサポートいたします。
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