住宅ローンを滞納し続けると、期限の利益を喪失し様々なデメリットが発生します。
この記事では、どのようなときに期限の利益を喪失するか、期限の利益を喪失のデメリット、また期限の利益を喪失した後の流れを解説しています。
さらに、期限の利益を喪失の最大のデメリットである競売を回避する方法として、任意売却についても言及しているので最後までお読みください。
期限の利益とは
期限の利益とは、一定の期日が到来するまでは、債務の履行をしなくてもよい権利のことです。
例えば、ローンでお金を借りることを消費貸借契約といいますが、お金を借りた人(債務者)は、契約で定めた期日までにお金を返せばよく、債権者に期日以前に返済を迫られても、払う必要はありません。
期限の利益は債務者のために定めたものと推定され(民法136条)、期限の利益は放棄することができます。つまり、債務者は期限までに好きな時に、お金を返すことができるのです。
期限の利益喪失事由
期限の利益を失う事由は民法137条で定められています。これを、「法律上の期限の利益喪失事由」といいます。
民法137条は任意規定といって、これ以外にも、契約内容で期限の利益喪失事由を加えることができます。
これを「契約上の期限の利益喪失事由」といいます。
以下で詳しく解説します。
法律上の期限の利益喪失事由
法律上の期限の利益喪失事由は、民法137条で決められています。
期限の利益喪失事由は、以下の3つです。
・債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
債務者が破産した場合、期限まで待っても返済できる可能性は低いでしょう。
したがって、期限の利益を喪失します。
・債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
債務者が担保を滅失や損傷など、債権の回収が困難になる可能性があります。
・債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
債務者が支払えなくなった途端に、債権の回収が不可能になります。
いずれも、債務者側の事情で、債権の回収が困難になった場合、期限の利益を失います。
契約上の期限の利益喪失事由
住宅ローンなどの消費貸借契約を締結する場合、期限の利益喪失条項を定めます。
主な期限の利益喪失条項は以下の通りです。
・返済の滞納
住宅ローンでは、この条項による期限の利益喪失が多いです。
・重大な契約違反
虚偽の告知や、告知義務違反、住宅ローンで借りたお金を他の用途に使用したなどがこれに当たります。
・破産以外の債務整理
民事再生や債務整理に入ると、やはり債権回収が困難になります。
・差押え
債務者の信用に対して不安を覚えるような事項も、期限の利益喪失事由に当たります。
・所在不明
所在が分からなければ債権の回収のしようがありません。
以上のように、民法137条よりもかなり広範囲で、期限の利益喪失事由を定めています。
期限の利益喪失のデメリット
期限の利益を喪失すると、主に以下の3つのデメリットが発生します。
・残債務の一括弁済を求められる
・遅延損害金が発生する
・最終的に競売になり家を失う
以下で詳しく解説します。
残債務の一括弁済を求められる
期限の利益を喪失すると、まず、残債務を一括で弁済するように求められます。
つまり、住宅ローンの残債務が2,000万円だとしたら、2,000万円を現金で一括で返済してくださいということです。
しかし、月々数万円の支払いができない人が、2,000万円を一括で返済できるはずがありません。
期限の利益を喪失すると
すなわち、期限の利益の喪失は競売が始まる合図でもあるのです。
遅延損害金が発生する
期限の利益を喪失したとしても返済義務がなくなるわけではありません。
返済が遅れたことによる遅延損害金の支払いが発生します。
遅延損害金は、「残債務×遅延損害金の利率×期限の利益を喪失した日から数えた日数」となります。期限の利益を喪失した場合、遅延損害金は残債務全額に対して発生します。
遅延損害金の額は膨大になり、支払いはさらに困難になっていきます。
つまり、期限の利益を喪失した場合、ほとんど競売にかかることが確定してしまうのです。
最終的に競売になり家を失う
期限の利益を失うと、一括弁済の請求が求められ、遅延損害金も発生するとなると、ほとんど返済は不可能になります。
しかし、そこで何も手を打たなければ、やがて家は競売にかかり、競落人に明け渡して、出ていかなければいけません。
何よりも精神的に辛いのは、競売にかかっていることが、近所の方に知られる可能性があることです。
競売が始まると、その物件に入札したい不動産業者等が、現地を調査しに来ます。中には、近所の方に競売物件に住んでいる人のことなどをヒアリングする不動産業者もおり、競売にかかっていることが知られてしまうのです。
近所の方に好奇の目で見られることは、耐え難い精神的苦痛でしょう。
期限の利益喪失から競売までの流れ
期限の喪失から競売までの流れをざっとご紹介します。
①代位弁済が行なわれる
受託ローンの滞納により、期限の利益を喪失し、保証会社が金融機関に代位弁済を行います。代位弁済とは、連帯保証人が本人に代わって、債権者に弁済をすることです。代位弁済をすると、債権は金融機関から保証会社へと移ります。
②保証会社から一括弁済の請求が来る
代位弁済後、債務者に残債務の一括弁済と利息、遅延損害金の賠償を求められます。
③競売申立て
一括請求を放置していると、保証会社は競売を申し立てて債権の回収をはかります。
④執行官の現地調査
裁判所の執行官による競売物件の現地調査が行われます。現地調査により、物件の現況や住んでいる人、隣地との争いがないかなどを調査し、競売の資料にします。
⑤競売情報の一般公開
競売情報が一般に公開され、不動産業者等がこれを見て入札するか決めます。
現地を視察に来る入札予定者も多く、その際に、近所にいろいろ聞きまわる方もいます。
⑥入札・開札
一般に情報が公開されてから約2週間後に入札が開始されます。
競売を回避するには任意売却がおすすめ
競売を回避する方法には、①知人などから借金し、一括で弁済する、②住宅ローン特則を利用する、③任意売却を利用するなどの方法がありますが、おすすめなのは、③の任意売却です。
任意売却とは、抵当権の付いた不動産を債権者である金融機関の同意を得て、売却することです。
任意売却には、競売と違い、以下のようなメリットがあります。
・自宅を市場価格に近い価格で売却ができる
・近隣住民に知られることなく自宅を売却できる
・退去時期を交渉して決めることができる
競売に比べてメリットの多い任意売却ですが、うまくいくとは限りません。
任意売却を成功させるためには以下の3つのポイントを抑えることが大切です。
①任意売却の専門家に相談をする
任意売却の手続きは複雑で、一般の方が行うのは困難です。
②できるだけ早い時期に相談をする
早い時期に専門家に相談すれば、それだけ買い手を見つける時期が長くなるため、売主により良い条件で売却できる可能性があります。
③債権者との交渉
債権者はできるだけ投下資本を回収したいので、売却価格を高めに設定したがる傾向にあります。
この点、任意売却の専門家なら経験から適切な売却価格を債権者と交渉してもらえる可能性があります。
任意売却についてより詳しく知りたい方は以下のリンクをクリックしてください。
まとめ
期限の利益の意味と期限の利益を喪失するとなぜ危険なのかということについて詳しく解説してきました。
一度、期限の利益を喪失するともう後戻りができず、やがては競売で家を失います。
任意売却は、競売回避の方法として一般の方々にも浸透しつつあります。
しかし、任意売却を行うには、手続きの煩雑さや金融機関との交渉といった専門的な知識やスキームが必要です。
任意売却を検討されているなら、全国任意売却支援相談室(千里コンサルティングオフィス)にご相談ください。
任意売却専門のプロフェッショナルが、最後までしっかりとサポートいたします。
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