住宅ローンを組むとき、銀行などの債権者から設定を求められるのが「抵当権」です。
ただ、抵当権という名称は知っていても、以下の疑問を抱く方もいらっしゃるでしょう。
「そもそも抵当権とはどんな権利なのか?」
「抵当権を設定する方法や費用は?」
「ローンを完済したときや不動産を手放すときには抵当権をどのタイミングで抹消するのか?」
この記事では、皆さまが普段感じている住宅ローンの「抵当権」への疑問を解消していただける情報をお届けします。
記事後半で、抵当権つきの住宅を相続する場合の対処法もお話ししますので、気になる方はぜひ最後までご覧ください。
住宅ローンの「抵当権」とは?
住宅ローンを申し込むとき、購入する不動産に「抵当権」の設定を求める金融機関がほとんどです。
しかし、なかには「そもそも抵当権とは何なのか?」と、疑問がある方もいらっしゃるでしょう。
この章では、抵当権の一般的な定義と設定する方法や費用など、基本的なポイントをご説明します。
定義
「抵当権」とは、お金を融資する債権者が、お金を借りる債務者の不動産を、債権回収のための担保にできる権利です。
具体的には、住宅ローンの債務者が債務不履行の状態(支払い不能)に陥ったとき、債権者は抵当権を行使して債務者の不動産を差し押さえ、裁判所で競売にかけて債権を回収します。
抵当権の設定を求めない金融機関も一部には存在しますが、借入可能額が低く、金利を高く設定しています。
抵当権設定登記の流れと必要書類
抵当権を設定する手続きが、「抵当権設定登記」です。
抵当権設定登記は、金融機関の要請に従って住宅ローンの債務者が手続きを行います。
自分で手続きすることもできますが、法務局での登記申請など高度な専門知識が求められるため、司法書士に依頼する場合がほとんどです。
抵当権設定登記は一般的に以下の流れで進められますが、司法書士に依頼すれば法務局への申請などの手続きをすべて代行してくれます。
①住宅ローン契約の締結
➁住宅ローン契約に基づき抵当権設定契約を締結 ③必要書類の準備 ➃管轄する法務局に抵当権設定登記を申請 ➄登記申請後1~2週間で登記手続きが完了 ➅法務局から登記事項証明書を取得して金融機関に提出 |
上記の流れのなかの「③必要書類の準備」に関して、債務者側で準備する書類もありますので注意しましょう。
債務者が準備する書類
・不動産の権利証(登記済証)
・印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
・実印
・本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
金融機関が準備する書類
・抵当権設定契約書(登記原因証明情報)
・司法書士への委任状
・法人番号がわかる書類
・印鑑(認印でも可)
抵当権設定登記にかかる費用
抵当権設定登記には、大きく以下の2種類の費用が必要になります。
①登録免許税
登録免許税の計算式は、「住宅ローンの借入額×0.4%」。
例えば、5千万円の住宅ローンを組んだ場合は、「5,000万円×0.4%=20万円」になります。
➁司法書士への報酬
登記申請を司法書士に依頼すれば報酬の支払いが発生します。
報酬は住宅ローンの借入額などの条件で異なりますが、おおよそ5万円~10万円ほどが目安になります。
また、法務局への登記申請時に、印鑑証明書(1通:450円)や登記事項証明書(1通:600円)の取得手数料もかかりますが、一般的には司法書士に支払う報酬に含まれます。
ただし、諸費用が別途請求されるケースもあるため、司法書士に依頼の際は事前に見積もりを確認しましょう。
「根抵当権」との違い
抵当権とは別に「根抵当権」という権利がありますが、違いは分かるでしょうか?
通常の抵当権は住宅ローンの担保として利用されますが、根抵当権は企業などの法人の事業資金融資で多く用いられる抵当権になります。
抵当権との違いとして、根抵当権では一般的に「極度額(上限金額)」を定めます。
企業が融資を受けるとき、その都度抵当権を設定するとしたら、余計な労力と費用がかかってしまいます。
そこで、根抵当権で極度額を設定すれば、上限金額の範囲内で何度でも融資と返済が可能になるのです。
住宅ローンの抵当権を抹消するタイミングと手続き方法
抵当権は、住宅ローンを完済すれば行使される心配がなくなります。
しかし、住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的に抹消される訳ではなく、実は登記簿上は記載が残ったまま。
債務者がタイミングを見計らって「抵当権抹消登記」の手続きを行わなければなりません。
抵当権抹消登記を行うタイミングとして、おもに以下の3つのケースが考えられます。
①住宅ローンを完済したタイミング
➁住宅ローンを借り換えるタイミング ③不動産を相続するタイミング |
抵当権抹消登記を行うタイミングは人それぞれですが、住宅ローンを完済したタイミングで行うのが一般的です。
通常、住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消登記に必要な書類が送られてきます。
手続きは任意で特定の期限は決められていませんが、放置するメリットは1つもありません。
抵当権が残った不動産は売買契約が結べないほか、後で説明する遺産相続の際に問題が発生するため、できるだけ早い段階で抹消手続きを行いましょう。
自分で抵当権抹消登記する場合の流れと必要書類
抵当権抹消登記は、設定登記と同じように司法書士に依頼するケースが大半です。
しかし、最近は自分で抹消登記を行う方も増えており、司法書士などの専門家でなくても、比較的簡単に申請ができます。
参考に、住宅ローンを完済したタイミングで、抵当権抹消登記を自分で行うときの流れをご紹介します。
①提出書類を準備する(金融機関から書類を受け取る)
➁抵当権抹消登記申請書を作成(法務局から書式「15」をダウンロード) ③管轄する法務局の窓口に必要書類を提出 |
住宅ローンを完済すれば、金融機関から以下の書類が送られてきます。
・弁済証書:住宅ローン完済を証明する書類
・登記済証(登記識別情報):抵当権設定時に抵当権者に交付される書類
・登記事項証明書:金融機関の登記事項証明
・金融機関の委任状:抵当権抹消には債権者・債務者双方の申請が必要
すべて抵当権抹消登記の手続きに必要な重要書類になるため、紛失しないよう厳重に保管しておきましょう。
抵当権抹消登記にかかる費用
抵当権抹消登記にかかる費用は大きく以下の2種類になります。
①登録免許税
登記申請にかかる税金で、収入印紙を登記申請書に貼り付けて提出します。
費用は不動産1筆あたり1,000円。
一戸建ての場合、土地と建物に抵当権を設定するため、抹消には土地・建物2筆分の2,000円が必要になります。
➁登記情報確認
現在の登記内容が確認できる、登記事項証明書を取得する費用です。
登記事項証明書の取得には、窓口で1筆あたり600円、オンラインの場合は1筆あたり500円が必要になります。
また、司法書士に手続きを依頼した場合は、抵当権1件あたり1万円~2万円ほどの報酬の支払いを想定しておきましょう。
抵当権つきの不動産を相続したときの対処法
親が購入した住宅を遺産相続するとき、抵当権が気になる方もいるのではないでしょうか?
住宅ローンを完済したうえで、抵当権を抹消した不動産を相続する場合はまったく問題ありません。
しかし、抵当権つきの不動産を相続する場合は、さまざまな問題が発生する危険があり、実際にお困りの方もいるでしょう。
この章では、抵当権つきの不動産を遺産相続したときの対処法を簡単にご説明します。
まずは不動産登記の確認を
住宅などの不動産を遺産相続する場合、まずは早急に法務局から「全部事項証明書」を取得して、不動産登記の確認を行いましょう。
全部事項証明書とは、抵当権の設定・抹消を含む、不動産登記に関わるすべての内容が記載された証明書で、申請すれば誰でも取得できます。
管轄する法務局の窓口で取得できるほか、オンラインでの取得も可能です。
それぞれの取得方法で以下の手数料が必要になります。
・法務局の窓口で交付:1通あたり600円
・オンライン交付:1通あたり500円
・郵送で取得する場合:1通あたり600円+郵送代
住宅ローンを完済していれば抵当権抹消登記が必要
不動産登記の確認と併せて、住宅ローンの返済状況の確認も行ってください。
住宅ローンの返済状況は、融資を受けている金融機関から「返済計画表(償還予定表)」や「残高証明書」を発行してもらえば確認できます。
そこで、既に住宅ローンを完済している場合は、抵当権抹消登記が必要になります。
抵当権抹消登記には2-1で説明した4種類の書類が必要になりますが、金融機関に依頼すれば、手数料はかかるものの再発行も可能です。
住宅ローンの残債が残っていれば相続放棄も可能
住宅などの不動産を相続する場合、住宅ローンの残債があれば、その債務も相続しなければなりません。
住宅ローンの債務状況を確認して、返済できる金額なら返済継続も可能です。
しかし、残債の金額が大きく返済が難しい場合は、「相続放棄」という方法もあります。
相続放棄とは「すべての財産の承継を拒否すること」。
被相続人が亡くなってから3ヶ月以内であれば、相続放棄が選択できます。
ただし、相続人が相続放棄を選択すれば、住宅ローンの返済義務はなくなりますが、不動産を含めた被相続人の財産が一切相続できなくなるため、慎重な判断が求められます。
相続放棄の前に売却の検討を
住宅ローンの債務が残っている不動産を相続する場合、相続放棄をお考えの前に不動産の売却を検討してみましょう。
相続放棄を選択すれば財産が一切相続できなくなりますが、売却すれば少しでも財産が残る可能性があります。
そこで、売却をお考えの際は早急に不動産の価格査定を行ってください。
不動産の価格査定を行うことで、住宅ローンの残債との比較ができ、ローンの残っている不動産が以下のどちらの状態に該当するかを確認できます。
①アンダーローン:物件価格が住宅ローンの残債を上回る状態
➁オーバーローン:住宅ローンの残債が物件価格を上回る状態 |
この住宅ローンの「アンダーローン」・「オーバーローン」で自宅の売却方法に違いが生じてきます。
①アンダーローンの場合
アンダーローンの不動産であれば、売却額で住宅ローンを完済できるため、抵当権の抹消も可能です。
また、不動産を手放したくなければ、「リースバック」の利用をおすすめします。
リースバックとは、不動産売買と賃貸借契約が一体になった不動産取引です。
自宅をリースバック事業者に売却して現金化したのち、事業者との間で賃貸借契約を結び、家賃を支払いながら自宅にそのまま居住できます。
【参考記事】
➁オーバーローンの場合
オーバーローンの不動産は売却しても債務が残り、抵当権も抹消されないため、一般的な不動産売買ができません。
そのため、オーバーローンの不動産では一般的に「任意売却」が利用されます。
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった不動産を、債権者の合意を得て処分する不動産取引です。
オーバーローンの不動産を債権者の同意を得たうえで売却し、住宅ローンの債務を残したまま抵当権を抹消してもらえます。
任意売却をより詳しく知りたい方は「任意売却とは」をご覧ください。
まとめ
住宅ローンを申し込むとき、ほとんどの金融機関から設定を要請されるのが「抵当権」です。
抵当権とは、債権者が債務者の不動産を債権回収のための担保にできる権利であり、債権者の要請に従って債務者が抵当権設定登記を行う必要があります。
抵当権設定登記は一般的に司法書士に依頼しますが、抵当権を抹消するタイミングでは自分でも抵当権抹消登記が可能です。
一般的には住宅ローンを完済したタイミングで抵当権抹消登記を行いますが、遺産相続の際は注意しましょう。
抵当権つきの不動産を相続する場合、住宅ローンの残債があれば、完済しない限り抵当権は抹消できません。
そこで、住宅ローンの債務状況によって相続放棄も選択できますが、売却の検討をおすすめします。
住宅ローンの「アンダーローン」・「オーバーローン」で売却方法に違いはありますが、リースバックや任意売却をお考えの方は「全国任意売却支援相談室(千里コンサルティングオフィス)株式会社」までご相談ください。
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