親子や兄弟など、親族間で不動産を売買することを「親族間売買」といいます。
親族間売買では、市場価格より著しく安い価格で不動産の売買が行われる恐れがあるため、税務署から厳しくチェックされています。
その結果「みなし贈与」と判断されると贈与税の対象となり、場合によっては不動産の購入価格以上の税金を支払わなければなりません。
そのようなことにならないよう、あらかじめ売買の適正価格を調べておきましょう。
本記事では、親族間売買における適正価格を知る3つの方法をご紹介します。
親族間売買を検討中で適正価格を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
親族間売買における適正価格とは?基本を押さえよう
親族間売買を成立させるには、適正価格での取引が重要なポイントです。
まずは、親族間売買における適正価格について解説します。
売買価格の決め方
一般的に不動産の売買価格は、売り主と買い主との間で自由に決めることができます。
「なるべく多くの利益を出したい」と考える売り主と、「少しでも安く買いたい」と考える買い主の両方が納得できる価格を設定する必要があります。
しかし、親族間売買の場合は不動産の名義変更を目的としている場合が多く、利益を求めて売却するケースはほとんどありません。
そのため、相場より安い価格で取引することが考えられます。
安い価格での取引が成立すれば、買い主は得をすることになります。
そのような取引は税制上、問題になることがあるため注意が必要です。
「みなし贈与」に注意が必要
相場より著しく安い価格で親族間取引を成立させようとすると「みなし贈与」と判断される恐れが出てきます。
「みなし贈与」とは、不動産の「売買」ではなく「贈与」を行ったと認識されることです。
親族間売買の場合、不動産の相場価格との差額が「贈与」とみなされてしまいます。
たとえば、通常だと4,000万円で取引される不動産を自分の子どもに1,000万円で売却した場合、差額分である3,000万円が「贈与分」として取り扱われることになるのです。
親族間売買を適正価格で行わないとどうなる?
親族間売買において、不動産を適正価格で売買しなかった場合はどうなるのか、事前に確認しておきましょう。
税務署の厳しいチェックが入る
親族間売買は売り主と買い主が親族の間柄であり、不動産会社に仲介を依頼する必要もありません。
そのため「黙っていれば税務署に知られずに済むのではないか?」と思われる方も多いでしょう。
しかし、税務署は親族間売買に対して厳しくチェックしています。
親族間で不動産を譲渡するには、贈与や相続という方法もあります。
売買を選択したのは「税金の支払いから逃れるためではないか」と疑いをかけられやすいのです。
過去に贈与税を逃れるための売買事例が存在していることも、税務署が厳しくマークする理由の一つです。
みなし贈与と判断されると課税対象になる
税務署によって親族間売買が「みなし贈与」と判断された場合は、贈与税の支払いが必要になります。
贈与税は贈与額の基礎控除後の金額に対して課税されます。
税率は取引が行われる親族同士の関係性によって変わるため、事前に確認しておきましょう。
祖父母や父母などの直系尊属から、子や孫に贈与した場合は「特例贈与」、兄弟間や夫婦間などの直系尊属以外の間で行われた贈与は「一般贈与」に該当します。
まずはどちらに当てはまるのかを確認し、税率がいくらに設定されているのか調べることをおすすめします。
国税庁の公式サイトにある速算表から税率がわかるため、この表をもとに計算してください。
国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
親族間売買の適正価格を知る3つの方法
親族間売買をスムーズに成立させるためには、適正価格で売却して、「贈与」とみなされるのを防ぐことが大切です。
では、親族間売買における適正価格を知るには、どのような方法があるのでしょうか。
自分で路線価を調べる
親族間売買での適正価格を知る基準として、路線価を用いる方法があります。
路線価とは土地が面している道路の価格を示すもので、不動産に相続税や贈与税を課税するために国税庁が調査して発表します。
その年の1月1日時点の路線価が、毎年7月に国税庁のホームページで閲覧できるようになるため、チェックしてみるとよいでしょう。
もちろん、土地の価格はその土地の状態や環境などによっても変わることから、路線価のみで不動産の売買価格を決めるのは難しいと言えます。
しかし、路線価を参考にすることで「みなし贈与」と判断されて課税対象になる可能性は低くなります。
不動産会社に査定を依頼する
路線価で不動産の適正価格を判断するのが難しい場合は、不動産会社への査定依頼も検討しましょう。
一般的な不動産売却においても、売り出し価格を決めるために不動産会社の査定結果を参考にする場合が多くなっています。
査定額は、間取りや築年数、面積などの物件情報をはじめ、周辺環境や類似した物件の取引価格などをもとに算定されます。
ただし、比較物件の選び方や担当者の判断などによって査定価格に差が出ることもあるため、できれば複数の不動産会社に査定を依頼し、比較するのがおすすめです。
不動産鑑定士に依頼する
贈与とみなされないためにも、より適正な価格で不動産を売買したいときは、不動産鑑定士に依頼する方法も考えてみるとよいでしょう。
不動産鑑定士に依頼すれば、税務署にも提出できる正式な書類である「不動産鑑定評価書」を作成してもらえます。
この書類を作成できるのは不動産鑑定士のみであるため、依頼するメリットは大きいでしょう。
ただし、不動産鑑定士に依頼する場合は最低でも10万円以上の費用が必要で、鑑定評価書が手元に届くまで1カ月ほどかかります。
その点も踏まえたうえで、どのような方法で適正価格を確認するべきか検討するとよいでしょう。
まとめ
親族間売買を成立させるうえで適正価格での取引が必要な理由や、適正価格を知る方法についてご紹介しました。
親族間売買を選択すれば自宅の所有権を他人に渡さずに済むことなど、さまざまなメリットがあります。
しかし、市場価格よりも著しく安い価格で売買すると「みなし贈与」と判断され、課税対象になる可能性があるため注意が必要です。
不動産の適正価格を知るためには、以下の方法があります。
・自分で路線価を調べる
・不動産会社に査定を依頼する
・不動産鑑定士に依頼する
みなし贈与と判断されることなく、スムーズに不動産を売買できるよう、どの方法で適正価格を確認すべきか慎重に検討してみるとよいでしょう。
「住宅ローンの返済が困難になった」などの理由で親族間売買をお考えであれば、任意売却を検討することも一つの方法です。
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