銀行差し押さえ物件とは、住宅ローンの滞納が続くときに、銀行が裁判所を通して差し押さえる物件のことをいいます。
差し押さえられた物件は、競売によって強制的に売却され、その代金が債権の回収に充てられます。
ただ、銀行の差し押さえ物件に、いくつか疑問をお持ちの方もいるでしょう。
「銀行は、どのような流れで物件を差し押さえるのか?」
「銀行に物件が差し押さえられるまでの期間は?」
「差し押さえられた物件は、最終的にどうなるのか?」
この記事では、銀行の差し押さえ物件について、住宅ローン滞納から物件差し押さえまでの流れと、競売を回避する方法を分かりやすくご紹介します。
銀行差し押さえ物件とは?
銀行差し押さえ物件とは、銀行が「抵当権」を行使して、強制的に差し押さえる物件を指し、最終的に裁判所を通して「競売」にかけるため、「競売物件」とも呼ばれています。
この銀行が行使する「抵当権」とは、住宅ローンを融資する銀行が、債務者の不動産を債権回収の担保にできる権利のこと。
具体的には、住宅ローンの債務者が支払い不能に陥ったとき、銀行は抵当権を行使して債務者の不動産を差し押さえ、裁判所を通して競売にかけ、債権を回収するのです。
抵当権のことを詳しく知りたい方は、以下のコラムも併せてご覧ください。
【参考記事】⇒住宅ローンの抵当権とは?抹消するタイミングと手続き方法解説
銀行差し押さえ物件のほかに不動産が差し押さえられるケース
家や土地などの不動産の差し押さえは、住宅ローンの滞納以外にも、以下のケースで行われます。
①税金の滞納
➁借金の滞納
税金の長期的な滞納には、国から差し押さえを含めた滞納処分が科せられ、住宅ローンとは別に借金を滞納している場合も、債権者による差し押さえが行われるでしょう。
そもそも不動産を含めた財産の「差し押さえ」とは、債権者の申し立てに基づき、国が私的財産の処分を禁止することです。
具体的には、債務者が支払い不能に陥ったとき、債権者が未払い金を回収できるように、債務者が所有する財産を勝手に販売・処分することを禁止します。
差し押さえの対象は、一般的に以下の3種類の財産になり、税金や借金の滞納金額が大きい場合に、家や土地などの不動産の差し押さえが行われます。
・動産:現金・貴金属・有価証券など
・債権:預金債権・給与債権など
・不動産:住宅・土地など
税金の滞納処分や住宅ローンへの影響などが気になる方は、以下のコラムも併せてご覧ください。
【参考記事】⇒税金滞納は要注意!住宅ローンへの影響と審査通過の解決策
住宅ローン滞納から銀行が物件を差し押さえるまでの流れと期間
実は住宅ローンを滞納した場合でも、すぐに物件が差し押さえられる訳ではありません。
銀行もさまざまな手続きを行い、債務者に自主的な返済を促し、それでも滞納が続く場合に、最終的な手続きで物件の差し押さえを行います。
そこでこの章では、住宅ローンの滞納から銀行が物件を差し押さえるまでの流れと、各手続きに至るまでの期間をご紹介します。
手続きまでの期間は、銀行によって対応に違いがあるため、目安としてご覧ください。
銀行からの催促:滞納~1ヶ月
住宅ローンを1ヶ月でも滞納すれば、銀行から催促の連絡がきます。
なかには「すぐに返済します」と答える方もいますが、返済できなければ銀行は不信感を抱くでしょう。
なぜ返済が遅れているのか、正直に説明することをおすすめします。
督促状/催告書が届く:滞納~2ヶ月
住宅ローンの滞納が2ヶ月になると、銀行から「督促状」が届きます。
督促状には、返済期日までに入金が確認できていないことや、滞納期間・未納金額などが明記される程度で、法的な拘束力はありません。
そこで、督促状に従わず何も対応しない場合、銀行から最後通告で送られてくるのが「催告書」です。
催告書には、「期日までに入金の確認ができなければ、期限の利益が喪失し、保証会社が代位弁済する」旨の、かなり厳しい内容が記載されています。
しかし、まだこの段階で返済できれば先の手続きに進むことはなく、債務者にとってはラストチャンスになるでしょう。
期限の利益の喪失通知書が届く:滞納3~4ヶ月
督促状/催告書の返済要請にも従わず、滞納が3~4ヶ月経過すると、「期限の利益の喪失通知書」が届きます。
期限の利益とは、銀行と取り決めた返済期間は分割返済でき、一括返済を求められない権利のこと。
期限の利益の喪失通知書が届いたら、債務者は分割返済の権利を失い、残債を一括返済しなければなりません。
代位弁済通知書が届く:滞納4~5ヶ月
期限の利益の喪失通知書が届いたあと、数日後に届くのが「代位弁済通知書」です。
代位弁済とは、住宅ローンの債務者の代わりに、保証会社が残債を銀行に支払うこと。
つまり、代位弁済通知書が届いた段階で、保証会社がローン残債を銀行に支払ったことを意味します。
保証会社がローン残債を返済するため、銀行の債務はなくなりますが、返済義務がなくなるわけではありません。
以降は債権者が保証会社に変わり、一括返済を求められますが、督促は銀行よりも厳しくなるでしょう。
競売開始決定通知書が届く:滞納~6ヶ月
債務者は保証会社から一括返済を求められますが、返済できないケースがほとんどです。
そもそも一括返済できれば、住宅ローンは滞納しないでしょう。
そこで、保証会社が債権回収のため、裁判所に申し立てるのが「競売」です。
申し立てが裁判所で認められれば、家や土地などの不動産の差し押さえが行われ、債務者には「競売開始決定通知書」が送られてきます。
執行官の調査~競売入札の開始:滞納~7ヶ月
競売開始決定通知が届いた1ヶ月程あとに、裁判所から「現地調査通知」が届きます。
それから、裁判所の執行官が現地を訪れ、適正な売却価格などを査定。
調査後は、競売物件の情報が公示され、誰でもインターネットで閲覧できるようになります。
そして、債務者には「期間入札の通知」が届き、その2~3ヶ月後、購入希望者による入札が行われます。
購入希望者は、設定された期間内に入札し、もっとも高い値段をつけた人が落札。
落札者は、裁判所から購入を認められると、代金を裁判所に支払い、その代金を保証会社が回収するのです。
競売を回避できるケース「任意売却」とは?
競売を回避する方法として、ご利用をおすすめするのが「任意売却」です。
住宅ローンを長期的に滞納すれば、前項の流れの通り、物件は強制的に差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
ただ、すぐに物件を差し押さえる訳ではありません。
そこで、差し押さえられる前に任意売却ができれば、競売を回避できるのと同時に、競売よりもよい条件で売却できる可能性があります。
任意売却とは?成功するまでの流れ
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった不動産を、債権者の許可を得て売却する不動産取引です。
任意売却に成功すれば、市場価格により近い金額で売却できる可能性があります。
【参考記事】⇒任意売却とは
ここで、任意売却の一般的な流れを見ていきましょう。
①専門家への相談
➁不動産の価格査定および住宅ローンの残債確認
③債権者に任意売却の許可を得る
➃不動産売買開始
➄買主(買受人)の決定
➅売買契約の締結
➆引っ越し~決済
任意売却の手続き期間は、物件ごとに違いはありますが、3ヶ月~6ヶ月が一般的な目安。
そこで、前項の流れを考慮すれば、銀行から催促や督促状が届いた段階が、任意売却を行うベストタイミングといえます。
もちろん、住宅ローンを滞納する前に検討するのも有効です。
任意売却を検討する場合、対応が遅くなるほど手続きが難しくなるため、できるだけ早い段階で決断することをおすすめします。
任意売却の基本的な流れを知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。
【参考記事】⇒任意売却の手続きの流れは?相談~決済まで分かりやすく解説
ただし、手続きのタイムリミットは「競売入札開始の前日」まで!
任意売却は、物件が競売にかけられるまでの期間も、手続きは進められます。
しかし、手続きができるタイムリミットは、「競売入札開始の前日」までです。
具体的には、競売入札開始の前日までに、購入者が決定し、代金の支払いまで終わっていなければなりません。
開札日を迎えたら、任意売却の手続きが一切できなくなるため、できるだけ早い段階での決断が重要になるのです。
まとめ
住宅ローンを長期的に滞納した場合に行われるのが、銀行による物件差し押さえです。
ただ、銀行もすぐに物件を差し押さえる訳ではなく、さまざまな手続きで債務者に自主的な返済を促しますが、応じない場合に差し押さえが行われます。
債務者が住宅ローンを分割返済できるラストチャンスは、督促状や催告書が届いた段階です。
銀行から「期限の利益の喪失通知書」や「代位弁済通知書」が届いたら、保証会社から残債の一括返済が求められ、支払えなければ、物件は差し押さえられ、最終的に競売にかけられてしまうでしょう。
そこで、銀行から督促状が届いたとき、もしくは返済が困難になったときに利用したいのが、「任意売却」です。
任意売却に成功すれば、市場価格により近い価格で売却できる可能性があります。
ここでは、任意売却の流れなど簡単にご紹介しましたが、流れを含めて任意売却で分からないことがあれば、「全国任意売却支援相談室(千里コンサルティングオフィス)株式会社」までお気軽にご相談ください。
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